園長のつぶやき
毎月の父母会で配布している園長のメッセージです

2011年度5月 ②バングラデシュの子育て

2011-05-20 08:35楽しい子育てに向けて

◆楽しい子育てに向けて -②バングラデシュの子育て-

5月も半ばを迎え、春から夏へ向かって自然の息吹も力強さをましている中、幼稚園でも日々の生活を通して子ども達の輝きがさらに増してまいりました。先週にはバングラデシュからBDPの総主事であられるアルバート・マラカール氏をお招きして、ゆたかな交流のときを持つことができました。お迎えに際してはエイセフボランティア会やグリーンボランティア、ミーナ友の会の皆さんをはじめとして、多くの皆さん方にご協力いただきまして本当にありがとうございました。

今月はバングラデシュの子育て事情についてお伝えします。ご存知のように、バングラデシュは世界の中でも「最貧国」に位置づけられ、経済的に大きな困難を抱えている国の一つです。日本人の平均年収は400万円くらいだそうですが、バングラデシュ人の平均年収は3万円とも4万円とも言われています。単純に計算すると、一日に100円程度しか使えないことになります。一日当たり使えるお金が1ドル以下の人たちを「絶対的貧困層」というそうですが、バングラデシュでは国民のほとんどがその層に入ってしまう計算です。しかし、稼ぎがある(仕事がある)人はまだいい方で、日々の糧もろくに与えられない人たちも大勢いるのです。

貧困は、「貧困である →子どもを学校に通わすだけの余裕がない →教育が受けられない(=読み書き、計算ができない)ことで成人してからもろくな仕事に就けない →貧困から脱却できない」というように、負の連鎖を生み出してしまいます。BDPではこの20年に亘ってACEFの支援の下に「教育こそがバングラデシュの発展に不可欠である」と、学校に通えない子ども達のために無償で学校を開き、教育の機会を与えています。現在ではBDPの学校に通う子どもは11,000人を数え、大きな教育の運動に発展しています。私も以前訪バし、BDPの学校に見学に行く機会がありましたが、どの子どもも学校に行ける喜びでいっぱいに目を輝かせながら勉強している姿に感心させられたのを覚えています。しかし学校に通えても、卒業まで通学できる子どもは、稀といってもいいほど少ないそうです。それは、家庭の経済状態のために子どもも働かなければならないからです。学習を積み上げる重要性、それによって広がる将来の可能性などを親が知らない(親自身が教育を受けたことがない)ため、あるいは日々の暮らしがそれ以上にひっ迫しているため、子どもを学校に通わせきれないというのが実情のようです。

農村部の一般家庭を訪ねた時、7人、8人の家族が竹と泥でできた質素な家に身を寄せて暮らしていました。個々の部屋などはなく、共有スペースを目的によって使い分け、ある時はダイニングに、そしてある時は寝室にと使用するのです。ガスも電気も水道も通っていないので、近くの井戸から水を汲み、薪で火をおこし、土間で調理をします。子ども達は家の手伝いのために露店で花や果物を売ったり、夕食のエビを捕りに出たり、水を汲みに行ったりして、家族のために一生懸命に働きます。家族が協力し、毎日の生活のために団結して暮らしている姿には「本来の家族のあるべき姿」を教えられましたが、同時に、そこにはただ「生活のための毎日」が繰り返され、その後生活が向上していく可能性はどこにも見つからないという感じも受けました。

私たちは日本という恵まれた国で生活し、子どもが教育を受けることは今や当たり前となっていますが、そうではない現実を知ることで、「自分たちがどれだけ恵まれた環境を与えられているか」ということに気づくことができます。教育を受けることは「人生を選択するチャンスを広げる」ことです。せっかくそのチャンスが与えられているのですから、子ども達にはぜひ大きな夢や志を持って「期待に満ちた人生」を歩んでいってもらいたいと心から願います。そして、そのチャンスが与えられていない子ども達のことを忘れずに、そのチャンスが少しでも広がるように願い、これからもできる範囲で応援していきたいと思います。

◆今月の聖句 「主は羊飼い わたしには何も欠けることがない」(詩篇23編)

聖書の詩篇というところに書かれている言葉です。「神様は私たちの羊飼いのような存在です。私はそれだけで安心して生きていけるのです。」という、与えられている恵みに感謝し、神様を賛美する大変有名な詩です。これに続く言葉がまたとても素晴らしいので、機会があれば是非読んでみて下さい。
さて、羊はたいへん方向音痴な動物だそうです。よって群れで行動し、近くの仲間について行動するのですが、その群れを率いる存在が不可欠です。それが羊飼いです。羊飼いは広大な大地を羊の群れを率いて、エサとなる青草や水を与えます。嵐が来れば羊を雨風から守り、夜は獣やオオカミから羊を守ります。まさに羊と寝食を共にし、苦楽も共にする、羊から見れば命を守ってくれる「絶対の信頼を寄せられる存在」なのです。
私たちは与えられている恵みをついつい忘れ、独りよがりな考えに陥ってしまい、多くを望んでみたり、人と比べてみたりして歩むべき方向を見失ってしまうことが少なくありません。そういう意味では人間は羊に負けないくらい「人生の方向音痴」といえるかもしれません。
与えられている恵みに気づき、地に足をつけて、毎日を感謝の気持ちでいっぱいにして過ごしてまいりましょう。

園長 石川 勇