園長のつぶやき
毎月の父母会で配布している園長のメッセージです

2024年11月 脱便利!

2024-11-01 10:00共に生きる

◆共に生きる -脱便利!-

11月を迎え、だんだんと秋も深まってきました。この季節に公園に出かけると、木々が紅葉している様子が見られたり、どんぐりを見つけたりすることができます。もちろん、幼稚園の庭にも、近隣の地域の中にも「小さな秋」を見つけることができます。子どもたちは、いろんな場所で「実りの秋」と出合い、感じ、この季節を楽しみながら過ごしています。幼稚園では、この秋も「収穫感謝の礼拝とパーティー」を予定していますが、ゆたかな秋を与えて下さった神さま、多くの実りを与えて下さった神さまに対して、みんなで感謝を表す機会としたいと思います。

今月は「脱便利!」というテーマでつぶやいてみました。脱便利というと少々オーバーかもしれませんが、何気なく過ごしている日常生活の中で、便利さの陰となって忘れられがちな、でも「大切なこと」がけっこうあるのではないかと思います。今月はそれをご一緒に考えてみましょう。

便利さと考えると、まず私の頭に浮ぶのは「ドラえもん」です。四次元ポケットから「あったらいいな」と思うものを次から次へと出し、のび太を手助けしていくというおなじみのストーリーですが、その裏にはもうひとつ大切なメッセージが流れているように思います。番組を見ていると、ドラえもんは、道具の便利さにすぐに溺れてしまうのび太をいつも心配しています。つまり、便利なものに依存すると自分では努力や工夫をしなくなる、便利さを私利私欲のために独占しようとすると自分勝手になる、便利さを求める欲求(もっと便利にという欲求)には際限がないなど…、便利なものに飛びつき、依存したり、独占したり、更に求めたりしてしまう人間の弱さや、便利さの陰にある大事なもの(努力、協力、工夫、がまんなど)を見落とさないようにしましょうという作者からのメッセージが伝わってきます。

確かに私たちの生活は日進月歩で、一昔前と比較しても飛躍的に便利になり、快適になりました。しかし、それによって人間の感受性、生活力、工夫力、忍耐力、ものを大切にする心、感謝の心など…たくさんの性質や能力が失われてきているとも言えるのではないでしょうか。時代をさかのぼって便利さを捨てることはできないにせよ、どっぷりと便利さの中に浸かっているだけでは「ドラえもんに心配されるのび太」のようになってしまいます。

“Plane living and high thinking”という言葉があります。簡素な生活の中でこそ高い思想が養われるという意味あいですが、生活の中に「あえて」手間のかかることを入れてみたり、不便な要素を加えてみたりすることはとても意味があると思います。手間や不便さは工夫や協力、相談などを生み出し、必要な技能や知識を養うきっかけともなるからです。例えば、食についても自家菜園(プランターでも十分)などで農作物を栽培することはとても手間がかかることであり、不便なことです。しかし、収穫までの一連の作業を通して、必要な技能や知識と出合い、家族の協力や会話が生まれ、食する喜びに与ることができるのです。これはスーパーで買うという便利さの中では味わうことのできない経験です。このほかにも、電気や時計を使わないで過ごす日を設けてみたり、車や自転車を使わない一週間を過ごしてみたりと、アイデア次第で「手間や不便さ=簡素な生活」を味わうことができると思います。どうぞこれからもメリハリのある質の高い生活を目指して過ごしてまいりましょう。


◆今月の聖句 「主に賛美の歌をうたい、聖なる御名を唱え、感謝をささげよ」(詩篇30:5)

収穫感謝祭を迎えるにあたって、今月はこの聖句が与えられています。
 
収穫感謝祭の起源は、1620年9月6日にイギリスの清教徒と呼ばれる102名のクリスチャンたちが、メイフラワー号に乗って大西洋に船出したことにさかのぼります。彼らが、北アメリカのプリマスに上陸したのは11月の寒い空の下でした。そして、最初の木小屋が建ったのが、ちょうどクリスマスの日。異郷の地で迎える冬は厳しく、食べる物も着る物もほとんどなく、農耕のすべも知らず、飢えと寒さと病気で半数が死にました。やがて春が来た頃、親しくなった先住民族から種子をもらい農耕を教えられました。トウモロコシ、エンドウ、大麦、小麦などです。初めての収穫の秋。彼らは、予想以上の豊かな収穫に、教会で、家庭で、収穫感謝の礼拝をささげました。苦しかった忍耐の生活を振り返りつつ「小さな種子の芽を育て、太陽を輝かし、雨を降らせ、成長させて豊かな実りをお与え下さった神に感謝します」と心からの祈りをささげました。そして、友だちになった先住民族を招いて、小麦とトウモロコシでパンとケーキをつくり、七面鳥をとってきて一緒に喜びのパーティーを開きました。それが、11月に感謝祭を開いた最初です。その後240年余り経って、リンカーン大統領が、国の祝日に11月の第4木曜日を感謝の日と決めました。アメリカでは、この日、果実や木の実を料理し、開拓の労苦と神の恵みを思い起こしつつ、感謝することの大切さを教えています。

都市型のライフスタイルにあって、普段の生活ではなかなか感じることができない自然の恵みや、収穫の喜びかもしれませんが、「日々の食べ物を与えられている感謝」は私たちが忘れてはいけない感覚であり、精神だと思います。どうぞご家庭においてもこのことを皆さんで話し合い、食への思いを新たにされたり、またお子さんの食への関心を高めたりする機会としていただければ幸いです。

園長 石川 勇