園長のつぶやき
毎月の父母会で配布している園長のメッセージです

2011年度2月 ⑩IからWeへ

2012-02-16 11:24楽しい子育てに向けて

◆楽しい子育てに向けて -⑩IからWeへ-

 今年度の保育もいよいよ終盤を迎えました。2月に入り、インフルエンザなどの流行性疾患のため学級閉鎖を余儀なくされるという事態も発生いたしましたが、この時期を特に注意して過ごし、ご家族の健康も含めて皆で健康を守ってまいりましょう。来週には各クラスにおいて「成長を祝いあう会」が予定されています。この一年のお子さんの成長を皆で喜びあう機会としたいと思いますので、どうぞご一緒に楽しみましょう。

 さて、今月は「IからWeへ」というテーマで楽しい子育てを考えてみたいと思います。子育ての悩みベスト3というと、「子どもの将来についての不安」、「しつけに関する心配」、「親自身の子育てのストレス(叱る、イライラしてしまう)」だそうですが、皆さんはいかがでしょうか。一方で、現代の子育て事情で課題となることとして、「孤独の中の子育て」が指摘されています。核家族化の中で、あるいは地域性の崩壊の中で、家庭の中にも、地域の中にも、「相談したり、頼れたりする存在がない」ところで子育てをしなければならない人が多いというのです。

孤独感をいっぱいに抱いて子育てにあたるとすれば、「一つひとつを丁寧に」とか、「待つことが大切」とか、子育てを指南する言葉も、「そうできない現実」にかえって戸惑い、悩み、挫折感すら与える言葉となってしまうでしょう。また、将来に対して、しつけに関して、不安や心配が先に立つほど、叱る、干渉することも多くなってしまいます。理想は、「親も子ものびのびと笑顔いっぱいに過ごしたい」はずが、現実の子育て環境はそうではないというケースが決して少なくないのです。子育ての理想と現実、私たちはこの狭間で子育てにあたっていますが、何とかこの孤独感を払しょくし、子育てが楽しいと思えるようにしたいものです。

私は幼稚園がその問題を解決する一つの糸口になれたらいいと思っています。幼稚園の毎日がお子さんを育てるのみでなく、お子さんを通してお母さんが、あるいはお父さんが、その輪を広げ、共に楽しい子育てに向けて「心と力を合わせられる」仲間へと育っていけるならば、こんなに心強いことはありません。「自分は孤独ではない、夢いっぱいの子どもの将来に向かって歩いて行こう」と思えるような子育てを皆でしていこうではありませんか。

IからWeへ、私の子どもから私たちの子どもへ、これからも幼稚園を最大限に活用して、お仲間と積極的に出会い、関わり、共に楽しい子育てに向けた日々を過ごしてまいりましょう。


◆今月の聖句 「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(マタイ25:40)

 
 昔マルチンというおじいさんがいました。マルチンさんは一生懸命に靴を作る職人さんでした。でもマルチンさんは奥さんと子どもを亡くして一人ぼっちでした。マルチンさんは仕事が終わると聖書を読み、お祈りを捧げる人でした。ある日いつものようにお祈りをしていると、イエスさまの声が聞こえました。「マルチン明日あなたの所へ行きますよ。」マルチンさんはびっくりして、でもワクワクしながらイエスさまを迎える用意をしました。温かいスープとお茶を用意して、朝からソワソワして窓の外を行き交う人たちを見ていました。
 雪かきのおじいさんが寒そうに仕事をしています。マルチンさんは気の毒に思ってそのおじいさんを部屋の中に入れ、温かいお茶を飲ませました。おじいさんは心も体も温まって帰っていきました。しばらくすると外で寒そうにしている女の人を見ました。女の人は赤ちゃんを抱っこしています。マルチンさんはその女の人と赤ちゃんを部屋に入れて温かいスープを飲ませ、奥さんが使っていたコートを着せてあげました。女の人と赤ちゃんはとてもうれしそうに帰っていきました。すると今度はひどく怒っているおばあさんの声がしました。そちらを見ると、男の子がリンゴを持って怒られているではありませんか。マルチンさんはどうしたわけか話を聞きました。男の子がおばあさんのお店のリンゴを盗もうとしたということでした。マルチンさんはそのリンゴのお金を払って男の子を許してもらいました。そういうわけで、イエスさまのために用意したスープやお茶もすっかり他の人にあげてしまってなくなってしまいました。  
気が付くともう外はすっかりと暗くなっていました。「今日はもうイエスさまはいらっしゃらないな」と思い聖書を読んでいると、誰かがいるような気がしました。暗闇に雪かきのおじいさんと、赤ちゃんを抱いた女の人、そしてリンゴ屋のおばあさんと男の子がにっこり笑って見えました。「マルチン私がわからなかったのか?あれはみんな私だったのだ」。マルチンさんは驚きましたが、心は喜びでいっぱいになりました。「夢ではなく本当にイエスさまが来てくださった!」と。
「貧しい人、力のない人、病気の人や家のない人の中に私はいます」。マルチンさんの机の上の聖書にはイエスさまの言葉がこう書かれてありました。

(くつやのマルチン/トルストイ原作) 
園長 石川 勇